2000/9/19

カワウソ


「鰻谷」だけど、ウナギダニじゃなくて、バンコクと読んでくださいね。タイに住み始めた海外駐在員のバンコク通 信。


鰻谷通信第8回

 

「愛と死その2ーお葬式」

今度はお葬式。

結婚式の次はいよいよお葬式ということで、その話を書いていきたいと思います。

ある月曜日、古参のタイ人社員が出社しておらず、その理由を周りの人に聞いたところ、その社員のお父さんが亡くなりお葬式になったということでした。タイでは年長者を敬う風があり、また家庭の中でも両親を大事にしています。
お葬式の間は当然会社を休んでそのために働くことになります。


タイのお葬式はだいたい一週間程度続くのが普通のようです。お寺にお葬式ができるような広い空間を持つ建物があり、そこを借りてやることになります。一般家庭はそうするのが普通ですが、家計が苦しいなどの事情がある場合は、3日間とか短縮されます。中には1日だけということもあります。

この社員のお葬式は一週間続きます。日本人としてもこうした社員の両親といった近親者がなくなった場合は、参加しなければなりません。私も行くことに決めました。タイ人社員がある特定の日に大挙して行くということになっていると聞きましたので、その日に合わせていくことにします。


かなりバンコクの中心部から離れたお寺(社員の家からは近い)で、お葬式をやっていますので、そこに向かうまでがかなり遠く、高速道路を使っても一時間以上かかります。定時後少ししてから出発しましたので、お寺に着いたときにはもうまっくらです。お寺の境内の雰囲気は日本とやや似ているかもしれません。大きな木がたくさん生えています。

複数の建物で、同時に複数のお葬式が営まれています。さすがに社員以外の家族の顔など見たこともありませんので、どちらのお葬式かと思いますが、先に来ていた社員の運転手がいて指示をしてくれました。
建物に近づくと、階段の前に社員が喪服(黒い服)をきて案内をしており日本とは習慣が違うのでどうかと思いましたが、とりあえず濃紺のスーツに黒いネクタイをして参加しました。当然のことながら黒いネクタイをしている人など他におりません。まあ特に浮いてもいなかったようです。タイに喪服というのがあるのかどうかわかりませんが、黒い服が比較的多かったように思いました。特に家族はすべて黒い服を着ています。といっても日本のお葬式のように参列者がすべて喪服を着ているというわけでもなく、その辺がタイ風です。


お葬式会場の入り口で靴を脱ぎ、用意された椅子に座ります。我々日本人社員は外国人なので、真ん中の比較的よい席に案内されます。近所の人らしい参列者は前の土間に座ったり、後ろの方の椅子に座ったりしています。


私がついたときにはすでにお葬式は始まっていました。
まず祭壇があり、そこに仏像が安置されその前に棺が置かれています。そのさらに前にいろいろなささげものが置かれています。この配置自体は日本でも見られるような具合で違和感がありません。しかし祭壇の床面に蛍光灯が組み込まれており、祭壇全体を白色の光が覆っているというのがタイ風です。日本でいえば、政治家や俳優が亡くなったときに大きなホールを使ってやられるお葬式に見られる演出です。


茶色とも柿色ともつかない、タイ風の衣を着たお坊さんが四名、祭壇の横、参列者の正面に座っており、お経を唱え始めます。手にはうちわのような道具をまっすぐたてて持っています。お経はタイ語ではなく、インドから伝わったパーリ語で、内容は当然全くわかりませんが、唱えている調子や音程などを聞いていると、日本のお坊さんが唱えるお経にそっくりです。タイ人にしても、このパーリ語のお経の内容は余りよくわかっていないようで、この辺は日本におけるお経の内容の理解度と似ているかもしれません。少し前のカトリックにおけるラテン語のミサも同様で、どちらかというとわかりにくい方がありがたさが増すということも理由の一つではありましょう。


香典は外国人の場合1,000バーツから2,000バーツといったところでしょうか。これは封筒に入れて先に家族に渡しておきます。

ご祝儀もそうですが、こういうものはなかなか相場がどうなのかを掴むのがむずかしいですね。というのもタイ人の中では、当然のことながらだいたいの相場があるのですが、外国人、特に職場で上司と言うことになるととたんにいくら出すべきかが難しくなります。タイバーツ建ての収入では我々日本人社員はかなり高給取りと言うことにもなります。

タイ人に聞いても、「気持ちだから」とか「いくらでもよい」というばかりですが、といってもタイ人と同じというのは期待されていないと言うことは伝わってきます。結局タイ人の相場に対し、何割増しというところから2−3倍というところが落ち着きどころです。


お経を唱え始めますと、タイ人参列者は一斉に手を合わせて祈り始めます。私もあわててみんなにならって、手を合わせました。それが15分か20分ほど続き、そして中休みになります。

中休みには手伝いに来ていた学生(社員の姉妹が教師をしており、その学校の生徒が手伝いに来ているということでした)が、水を配ったり、食事(お粥)を配ってくれます。あまりおなかがすいていないような気がしたので、はじめは断ったのですが、外国人がタイのご飯を嫌って食べられないというのでは具合が悪いので、もらうことにしました。食べ始めると(お粥と言うことありますが)全部食べてしまったのは我ながら意外でした。


お経を唱える、中休みをするというのを何度も繰り返しているうちに、タイ人社員が近づいてきて、これからお坊さんにタムブン(お布施)をするので、前に出て渡してくれといって来ました。何をどうしていいのかわからないのですが、とりあえず前に出ていきます。他にも他の兄弟姉妹の職場の関係者が前に並びます。結局一人のお坊さんにつき、一人のお布施をする人がつきます。

そこで他の人の様子を見つつ、社員の指示に従い、お坊さんにお辞儀をして、肩に掛ける布と食べ物とお金をささげます。


ささげ終わると祭壇に向かい一礼をしてまた席に帰ります。そのあとはまたお経が始まり、ひとしきり唱え終わるとお葬式は終わりになりました。


帰る前に祭壇に社員全員で、線香をささげ手を合わせます。その後で未亡人となった社員のお母さんに挨拶をします。一緒に参列していた同僚で年かさのタイ人社員の女性が、お母さんの手を握って何事かを話しかけています。お母さんはしきりにうなずいています。

私もこのようなときにかける言葉は、なんといっていいのかわからないのですが、とにかくお母さんに話しかけて挨拶をしました。かなり高齢になってなくなったので、大往生といえるのでしょうが、とはいっても肉親が亡くなった家族の気持ちに変わりはありません。ただお葬式も始まってから3日くらいたっていたので家族も落ち着きを取り戻していた感じでした。


結局お葬式が終わったときには9時近くになっていました。
それからまた一時間近くかけてバンコク市街地に戻っていきます。
これが初めてのタイでのお葬式でした。これが一般的なものなのかどうかはわかりませんが、これも一つの経験です。
全般的な印象はさほどの違和感がなく、日本が仏教国であることを実感させられます。

 



カワウソ

【PROFILE】
 とりあえず自分を曖昧に紹介しておきますと、タイに駐在する日本人で、総務・経理・財務・法務・その他いろいろ(営業以外)担当の30歳過ぎの男性ということになります。 妻あり、いまのところ子供なし、アパートにすんでおり、会社には自動車通 勤です。(電車でも通える)タイ語は買い物ができる程度より少しましな程度。勉強中です。 1999年にタイに駐在となりました。初めての海外駐在でもあります。したがって在タイ歴は短く、まだまだ経験のすべてが新鮮です。そのため在タイの長い人では不思議とも思わないようなことも、珍しく感じられます。自分でおもしろいと思ったこと、奇妙に感じたこと、腹立たしいことなどをこれから書いていきたいと思います。ただしバンコクに経験が限定されており、仕事も忙しいため、それほどタイ全般 の話ができるとは思いませんし、またコミュニケーション能力不足や思いこみ故の誤りもあるでしょうが、その点についてはご容赦お願いします。

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