2000/06/02

櫻井昌一
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バー「アフターノート」は、まおまお上でだけ開店中。店主の櫻井さんの語るお酒に関するお話をどうぞお愉しみください。もちろんノーチャージ。どうぞごゆっくり。 |
001 『ダイヤモンドダスト』
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シャンペンとはフランスのシャンパーニュ地方で造られている発泡する葡萄酒のことである。そして、シャンペンほど賛辞の多い酒もめずらしい。シャンペンは愛され ているのだ。 映画「カサブランカ」の中でハンフリーボガードが飲んでいたのがシャンペンカクテル。ビターズをしみ込ませた角砂糖を、グラスに注いだシャンペンの中に沈めるというシンプルなカクテルだ。角砂糖から立ち上る泡が美しい。そして、シャンペンに甘みを与えながら、次第にその姿を失ってゆく角砂糖が切ない。「カサブランカ」では、ハンフリーボガードが一人でバーボンを飲んでいる姿が有名なのだが、人前ではこのシャンペンカクテルを飲んでいる。フランスのシャンペンと、アメリカのバーボン。二つの国に共通することといえば、自由の女神がいるということ。イングリッドバーグマンは自由の女神でもあったのだ。そう考えるとボギーのまた違った葛藤がみえてくる。恋だけではなかったのだ。いや、恋そのものだったのか。 恋といえば、映画「プリティウーマン」の中のイチゴとシャンペン。イチゴの赤が高級娼婦、ジュリアロバーツの口紅の赤とダブって見えてとても印象的だった。現代版シンデレラストーリーといわれた「プリティウーマン」。美しさとは洗練の中にあるのか、イノセンスの中にあるのか。どちらにしても、シャンペンの泡のようなものなのか。間違っても、王子様ではない僕にはあまり関係のないことではあるのだが。 ヘミングウェイ。ロストジェネレーションといわれた彼だが、彼もまたシャンペンを愛した一人だ。G.H.Mummというブランドのシャンペンを愛した。アブサンとすこし退廃的な香りのするリキュールを垂らして午後の死というカクテルを造ったといわれている。自らの小説のタイトルをカクテルの名前につけるだろうか、という疑問は残るが、いかにも彼が作りそうなカクテルではある。 やはり、シャンペンは特別なのだ。それはシャンペンで作るカクテルの名前にも表 れている。シャンペンと黒ビールでブラックベルベット。カシスを垂らせば、キール ロワイアル。フランボワーズならキールインペリアル。シャンペンは愛されているの である。 さて、ダイアモンドダスト。シャンペンの泡のことをいう。華やかさとはかなさが同居しているかのような言葉である。先達がいうように、シャンペンの泡はまた自分自身の姿のようでもある。 でも、きっと大丈夫なのだ。ダストみたいなものかもしれないけれど、ダイアモンドなのだから。
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櫻井 昌一(さくらい しょういち)
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