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Order Recommended Vol.04 [CARTA]
二度あることは三度ある
川北 祥子
ピアノ奏者(stravinsky ensemble)
映画に出てくるものは全部アヤシいと思っている。限りあるスクリーンに映り込んでいるものは全てに意味がありそうだから見逃すわけにいくものかと思いながら見ている。二度出てくるものはさらにひっかかる。二度あることは三度あるに違いない。そうして三度目を手ぐすね引いて待っている。
出し抜かれるのもまた楽しいが、知らないうちにタキシードにパラシュートを仕込んでいて許されるのはジェームス・ボンドくらいで、普通なら伏線は必ず先に提示しておくものだ。もちろんそうそう簡単に見抜かれるような作り方はされていないから、結局あとから悔しい思いをし、さらに疑心暗鬼になって見ているとオチのつかないディテイルで頭の中がいっぱいになってしまったりもする。
オペラでは映画よりディテイルは限られるからその分重要度が高い。観客の協力も必要になる。何しろヒロインがちょっとフラっとしただけで結核を疑わなければならないのだ。そのくせ歌詞は何度も繰り返されたりするから始末が悪い。「苦難と悦楽」などと十回も叫ぶ間にどれだけの情報が伝達できることか。その容量を「声」に使い切ってしまうのがオペラなのである。しかしそんな中たった二秒で過ぎ去るこんな台詞(といってもやはり歌われるのだが)を追いかけてみるのも一興だ。
(ヴェルディ『椿姫』一幕)
パリ裏社交界の花形ヴィオレッタは純真な青年アルフレードと出会い、華やかな生活を捨てて彼との生活を選ぶ。
(同二幕)
幸せな生活はアルフレードの留守中に訪れた彼の父親に引き裂かれる。一家の名誉の為とせがまれ身を引いたヴィオレッタに、裏切られたと誤解したアルフレードは金をたたきつける。
(同三幕)
| 「不思議ね」なんだか力がわいてきたの 生きられるんだわ! |
誤解の解けたアルフレードと病床のヴィオレッタの再会。だが奇跡は起こらない。(キスで生き返ることが許されるのは白雪姫だけだ。)
ヴィオレッタの生涯における二度の大きな転機の台詞を三度目に最期の言葉として登場させる見事な台本。やはり二度あることは...待てよ、「二度あることは三度ある」というのは三度に限らず何度も繰り返すというたとえではなかったか。まあいいか、「一、二、たくさん」と数える人もいることだしね。
二度あったことはかならずもう一度繰り返される。特に悪いことは繰り返し起こるものだから注意しましょう。偶然ってふしぎですよね。
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川北 祥子
ピアノ奏者(stravinsky ensemble)
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東京芸術大学大学院修了、「トムとジェリー」とB級映画とパンダを愛するピアノ奏者。「トムとジェリー」からはクラシック音楽の神髄を、B級映画からはお金がなくても面白いコトに挑戦する心意気を学ぶ。
パンダからは...?
stravinsky ensembleの公演情報は下記URLでどうぞ。
http://www.ne.jp/asahi/ginga/panda/strv-ens/
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