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Order Recommended Vol.04 [CARTA]
年寄りのひや水
いしい しんじ
(作家・イラストレーター)
おぼえているのは、ぼくの祖母が居間でオレンジジュースを飲んでいたことです。ぼくは五歳ほどだった。うまそうに喉をならす祖母に、気の利いたことをいおうとぼくはおもった、なので、
「なあ、としよりの冷や水やなあ」
するとなんとしたことか、祖母はキッとぼくをにらみすえて、
「なにいうてんのや、阿呆!」
といったのです。ぼくはおびえた。
喉のかわいた老人が冷たい水をごくごくとのむ、ああよかったね、皺ものびるようだ、と、そういうふうなのんきな意味に、ぼくはこの諺を解釈していたのです。今更いくら謝ろうとしたって、祖母はとうにみえない煙になって、ぷかぷかどこかを漂っています。
としよりの冷や水、とは、老人が年に似合わず、危なっかしいこと、差し出がましいことをする、という意味です。このことばに、祖母ほど似つかわしくないひとを、ぼくはほかに知りません。まったく、年端もいかないこどもが、差し出がましいことばづかいをするものではないですね。なにごとも、年相応がいちばんってことでしょう。

老人に似合わない危ういことをするたとえ。また、老人が差し出たふるまいをすることをいったりします。このことわざを使うときにはくれぐれもご注意ください。
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