UP DATE:2001.6.29
 
今、活躍中のヘア・アーティストに、妙に気になるアノコトや、ちょっと違うゾとひっかかるソノコトを、大胆にきいてしまおう! というコーナーです。

  マオマオネット インタビュー第11弾
井之丸 泰子 Yasuko Inomaru
ヘアメイク・アーティストとして、雑誌やTVなどで大活躍の井之丸泰子さん。その華奢な体のどこに、溢れるバイタリティを蓄えているのでしょう? 祖母の代からの美容一家で、その血筋は一級品。“kakimoto arms”の若きクリエイティブ・ディレクターとして、NEW GENERATIONをリードします

text by ohka matsuura


伝統文化に受け継がれる“本物の世界”
日本古来の“美”を探りたい

 

 

 最近、いろんなカタチで“和のテイスト”が取り上げられますね、ファッションや生活のなかに。でも、一時のブームで終わって欲しくないなって思うんですよ。今、私が気になっているものに、“伝統的な和の世界”があるんですが、本能的に自分のルーツを知りたい、と誰もが感じているんじゃないかって思うんです。人は、「常に新しく、もっと何かを!」と求め続けるけれど、新世紀を迎えたことで時代の変わり目でもあるわけですから、あらためて足もとを見直してみることが、新鮮さを取り戻す鍵になるように感じます。

 実は、昨年あたりから、仕事を通して、あるいはプライベートで、自分の環境が変わってきたんですよ。それまでもジャンルにとらわれずに、さまざまな方とお会いしていたんですが、とくに伝統芸能の世界に生きる能役者や雅楽奏者の方々とお会いする機会が重なったんです。今までは、何代もつづく伝統芸能の世界を別世界のように感じていて、そういう中で生きる方々は“保守的”と想像で決めつけていたんです…。でも、実際にお会いしてみた方々は、まったく180度、違っていました。

 狂言やお能の役者さん、琵琶(びわ)、お琴、鼓(つづみ)の奏者…。同世代にして伝統世界を背負っているわけなんですが、古い伝統を守っていかなくてはならない使命感と同じくらい、その対極にある新しいものを求めるエネルギーが強いんだなぁ、と感じましたね。脈々とつづく歴史ある家系に生まれた宿命を素直に受けとめて、自分の存在を通して、さらに素晴らしいものに発展させ、磨きをかけていこうとしている。スゴイですよね。

 もともと、私が美容の世界を選んだのも、実は、親からの影響が強かったんですよ。実家は、飛騨で美容院を営んでいるんですが、一人っ子だったこともあって、違う道を選ぶことはできないって、薄々感じていました。高校生の時に受けた美容の通信教育は、“受けさせられた”っていう言い方が正しいんじゃないかなって思うくらいです(笑) 正直、親が敷いたレールの上を歩くことに反発もありましたよ。でも、母親の仕事をいつも見ていましたから。美容の仕事は幅が広くて、日常のヘアのことから、花嫁さんのお支度や成人式の着付けなど、ライフスタイルの大切な場面に関われる良い仕事だな、と肌で感じでいたんですね。血は争えないと言うか、祖母の代も美容師でしたし…。

 美容の勉強をするために東京に来て6年くらい経った頃でしょうか。懸命に美容の世界を追求するうちに、自分にとって転機となるような時期がきました。はじめて海外に長期で滞在する時間が持てたんです。当時、ずっとサロンの世界しか知らなかった私は、漠然とした不安も抱えていました。ですから、自分の作品をつくるための撮影旅行だったんですが、同時に、自分探しの旅でもあったんです。

 必死な思いで旅した2ヶ月間、ロンドンから入ってスペイン、パリ、ギリシャのほうへもまわりました。そして、帰国してみると、東京は灰色一色、美観はないし…、と真底がっかりしてしまったことがありました。たぶん、深い思いでまわった旅から帰ってみると、急に日常的な日本の風景が色あせてみえたのかもしれません。

 でも、海外や国内も含めたさまざま所へ行くようになった今、逆に、日本のおもしろさに気づいてきたんですよ。どんなに海外で仕事をしても、やればやるほど自分が日本人であることを思い知らされてくるんです。日本独特の美意識や、デリケートな感受性、日本人ならではのものが、知らずににじみ出てしまうのかもしれませんね。

 昨年、ベルリンで行われたウェラ・ステージのヘア・ショーに出演して、日本代表としてゼアミズム(世阿弥ズム)というテーマを表現しました。そんな場面では西洋スタイルをどう取り入れるかじゃなく、“日本独自の古来の美”をさらに深く知る必要性がある、と痛感しました。外国に出ることがなかったら、そんな風にあらためて日本の良さに気づくこともなかったでしょう。

 このところ、京都の雅さや粋な江戸文化などが気になります。古い着物もいいですね。ミニマリズム、色彩の美しさ。半襟や裏地など、見えないところに隠された美の表現。現代には失われつつある美しさを、大切にしたいと思うんですよ。

 日本の文化は、世界に誇れるものがたくさんあります。いいものはいい、と言い切れる本物を追求したいんです。だからこそ、日本人である自分のルーツにこだわりたい。受けつがれてきた文化や自分に流れる日本のルーツをふまえた上で、さらに新しい世界をつくりたい、って思うんですね。

 

中途半端なものは大キライ
女の子に夢を見させてくれなくちゃ!


 

 

 イケてないもの…、うーん、難しいなぁ。なんだろう? とにかく中途半端なものがキライ。五感になにも響いてこないようなもの。儲け主義で、この程度ならソコソコ売れるだろう、みたいな裏がみえてしまうようなものはダメですね。

 思いや主張、プライドがちゃんとあって、これだからいいのよ! って言い切れるようなものが好きなんです。例えば、世間になんだかんだと言われているギャルたち。チープでもフェイクでも過剰でも、メイクやファッションを思い切り楽しんでいて、その存在自体、世界中から興味を持たれていますよね。だからといって、彼女たちをスゴイと崇める気はないけれど、見ていて気持がいいですよ。なにか“心意気を感じる”んです。

 「中途半端なものがキライ」と言っても、なんでもかんでも一級品じゃなくてはだめ、というわけではありあません。こだわりすぎると、デイリーな生活に支障をきたします(笑) 毎日の生活の中で、気持ちよく、気軽に関われることって、けっこう大切でしょう? ですから、世の中に数々出回っている“ナンチャッテもの”でも、女性に夢を与えてくれるならOK。一瞬でもトリップさせてくれて、ワクワクできるニセモノならいいじゃないですか。

 女の人は、みんな買い物が大好きですよね、チープな物から高級ブランドまで。私は、それほど高級志向でもないので、そんなにお金のかかる人ではないんですが…。ちょっとした気分転換に、Tシャツやらアクセサリーやら、どどっと買ってしまうことも、たまにあります(笑) でも、直感的に気に入った物を買うので、値段に関わらず、なんでも大切にしていますよ。

 100円ショップでさえ、「うわぁ、これってカワイイよね〜」「これってキレイ〜」と楽しくなれるものなら、大好きなんです。でも、中途半端なマーケティングで、「この程度なら買うだろう」みたいなのがミエミエなものには、絶対、手を出しません。女の子の夢を壊す物は、最大級にイケてないものですよ。

 でも、これだけ物がどこででも豊富に手に入って、通信技術や環境が整備されると、本当に生活スタイルが変わってきますよね。オフィスに行かないで、自宅のコンピュータひとつで仕事ができるようになる。そうなると通勤しなくてもいいわけだから、オフィス向きだった女性のファッションは、どんどん変わってくると思います。本当に自分が心地よければいい! という価値観が浸透して、カジュアル思考が強まるんじゃないかな。だからこそ、ユニクロもアリ、なんですよ、安いし気持いいし。着る人に自信があって、ステキであれば、ユニクロもカッコイイわけです、“その人アリキ”ですから。

 ただ、そうなったとき、反面のストレスもあって、「人に見られたい」「ドレスアップして出掛けたい」「美しくいたい」っていう願望はより強くなるかもしれないですよね。それまでの装い方とは違ってきて、オンとオフがはっきりしてくる。そんな中、カジュアルな日常でも、ドレスアップした席でも、さまざま場面を楽しめるのが豊かさじゃないかと思います。ですから、いろいろな場面で、自分をどう表現するか? ドレスを着るのか、着崩したなかにカッコよさで決めていくのか? 自分らしいひとひねりが加えられる、遊び心をもった、ゆとりある女性ってステキですよね。

 そんな日常的なふるまいを大切にした“自分らしさ”を知るためのお手伝いが、美容を通してできたら…と思うんですよ。サロンにいらっしゃる方それぞれに、“なりたい自分”というのがきっとあると思うんです。そんな“なりたい自分になるために”、ビューティー・パートナーとして、いろんな方のお手伝いがしたい、協力して一緒につくっていきたい、そんな気持が強いです。

 エレガントとかシックとか服装の傾向だけで、個性が決まるのじゃなく、その人らしさ、その人の物腰や心意気までも自然に感じられるような、個人の洗練された美を追求したいと思っています。それは、本物とかニセモノとか、身につけている物の価値に関わらない、ひとりひとりの絶対的な魅力でもあるのですから。



そうですね、プライベートでは、素敵なパートナーや子ども、愉快な仲間に囲まれて、ニコニコと笑っているかな? 大好きな美容の仕事を通して、いろいろなジャンルの人々と、国境を越えて、“美を追究するようなコラボレーション”をしたいですね。女性の美だけに、とどまらずに…。とにかく、“パワフルウーマン”でいたいです。“愛と美”が世界を救いマス ! !(2001年6月)

 

Yasuko Inomaru's Works

NEW GENERATION#15  Allure  photography/Tomoko
NEW GENERATION#15  Allure  photography/Tomoko


NEW GENERATION#15  Allure  photography/Tomoko
NEW GENERATION#15  Allure  photography/Tomoko

NEW GENERATION#15  Allure  photography/Tomoko


NEW GENERATION#14  Seraphique  photography/Charlie Galbin
NEW GENERATION#14  Seraphique  photography/Charlie Galbin


NEW GENERATION#13 9ct  photography/Charlie Galbin

 

○井之丸 泰子 Yasuko Inomaru

 クリエイティブ・ディレクター、ヘアメイク・アーティスト。1982年、“kakimoto arms”入社。87年より、ヘアメイク・アーティストとして活動を開始。94年、96年、98年、ヘアメイク界のアカデミー賞と呼び名の高いJHA(ジャパン・ヘアドレッシング・アワーズ)を3度受賞。99年、フジテレビ「シザーズリーグ」出演。2000年、ベルリンにて開催されたヘアワールドWELLAステージに出演。2001年、「100秒の奇蹟」(フジTV系4/12〜OA)監修。“kakimoto arms”から毎年発表される新しいスタイル“New Generation”のイメージリーダーでもある。現在 ヘアメイク・アーティストとして、雑誌、CM、CDジャケット、ヘアショー、 ファッションショー等で活躍中。

 

Kakimoto arms
・田園調布店
・クレオ店
・自由が丘店
・青山店
URL=http://www.kakimoto-arms.co.jp/

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Kakimoto arms 自由が丘店、Kakimoto arms 青山店

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