UP DATE:2001.11.1
 
今、活躍中のヘア・アーティストに、妙に気になるアノコトや、ちょっと違うゾとひっかかるソノコトを、大胆にきいてしまおう! というコーナーです。

  マオマオネット インタビュー第15弾
有村 雅弘 Masahiro Arimura
原宿にあるIMAIIscaena。たおやかに曲線を描いた手すりを握り、サロンへの階段を上ると、大きなガラスが何枚もつづく窓際にそって盛られた“白い砂山”が、視界に飛び込んだ。アーティスティックな空気に解放され、同時に新鮮な刺激をすぐさま吸収できる…、感性とシステムの融合、IMAIIncentiveのコンセプトがそのまま表現されたような異空間である。今回のインタビューは、IMAIIncentiveのブランド・イメージをひっぱり、アーティスティック・ディレクターとして活躍する有村雅弘さんに、お話をうかがった



日常と非現実的な世界との境界
消費されない“デザイン”をつくりつづけたい

 

 

 自分のこだわり、みたいなことを考えると、今の時代、“消費されないこと”、それしかないなって感じてます。人間もそうだし、デザインもそう。今までは、消費されたから現在がある、というサイクルでまわっていたとも言えますが、21世紀は、消費されて終わるサイクルに、単純に組み込まれるままじゃなくて、もっと深く考えた提案や行動をしながら生きていくことが大事なのかなって思うんですよ。イケてる、イケてない、という話しとは少し違うかも知れないんですけど。

 もちろん、消費の循環があるから自分を残せてもいけるわけですが、決して消されてしまうモノはやりたくはない、という気持が強いんですね。美容業界において、波にのって一躍飛び出ることも、波に揉まれて落ちて、また這い上がってを経験することも必要です。でも、その過程で、使われっぱなしで終わってしまった…では、もともこもないですよね。なんのために、この仕事をやっていたんだろう? ってことになってしまう。そういう意味で、消費されたくない、ということなんです。

 ここ最近、急に“デザイン”が、もてはやされているじゃないですか。“デザイン”という言葉が、一般雑誌やさまざまな場面で簡単に使われているように感じます。そこで“デザイン”と言われて表現されたものは、すでに消費されてしまって後世に残らないモノになりかねない。けっきょく、日本社会はブームに盛り上がって、ブームで終わってしまうんですね。そこで何か大きなムーブメントに携わったとして、ブームに乗ってやってきてブームで終わる人もいれば、きちんと残る人もいる。その違いなのでしょう。

 カリスマ美容師というのが良い例です。どんな作品をつくったかわからないけれど、なんとなくもてはやされて、終わってしまう。日本そのものが消費文化で、ものを大切にしないとか、すぐにすててしまうとか、そういう傾向は否めない。デザインさえ使い捨てになって、残らないものになっていってしまう…。そんな危惧の気持もあって、「IMAGIST」というパンフレットをつくり、消費されないデザインをつくっていこうとしています。

 今回の「IMAGIST」(2001 SECOND TERM)では、日常と非現実的な世界との境界的な作品を表現しました。オブジェでもアートでもない、ヘア・スタイルぎりぎり、自分の日常ではないところの世界をデザインニングしたんです。これが、後世に残るかどうかはわからないけれど、消費はされない、って思うんですよ。さまざまなヘア・ショーを手掛けたりもしますが、こうした非日常的な作品を手掛けることで、次の発想も生まれてくる。ですから、あえて、最初の発想を大切にして定着していきたいと考えました。

 今回は、まず、ヘア・カラーから出発しました。色から発想される名前は? いうところから始まって、“アフリカン・レッド”“ミッドナイト・パープル”と名づけ、そこからどんなカタチが発想されるか、イラストに描きながら、まとめていきました。今回の作品は、あえてモノ的に、髪の毛でつくるギリギリのところでやっていて、ストレートでパーンと構築的に仕上げたことで、非現実的な空間を表現できたんじゃないかなと思います。逆に、カーブをつけたりウェイブをつけたりすると、意外と現実的になり、つまらなくなってしまうんですよ。

 こうした持続的なデザインの練り込みが、今は大事だなって思うんです。コマーシャル的なヘアスタイル、それはそれでビジネスとして売れて行かなくてはいけない大事な役割もありますが…。それだけじゃなく、デザイナーとしての能力を高めるためのものとしても“デザイン”がある。あるいは、見る人に、どんな印象をもってもらうかということにもつながってゆく。ブランドイメージの牽引となる、そうしたイメージの定着を、くり返しつづけること。これが、今一番、自分のイケてること、ですね。


 

髪の毛に触っているときがインスピレーションに触れているとき 休日は、なんにもしないんです(笑) 


 

 

 よく、「休みの日は何をしていますか?」とか聞かれますよね。「ものづくりのインスピレーションのため、プライベートはどんな風に過ごしますか?」とか…。でも、僕は、休みの日は一日中テレビを見てますね(笑) 昼間からビールを飲んで、ぼーっとして、何もしません。インドア派で、まったく何も考えないですね。アウトドア派じゃないし、美術館へ行ったりとか、なにかヒーリング的な充実した時間とか、そんなカッコイイことなんて、ぜんぜんありませんから(笑)

 アイデアを考えたり、なにか思いを巡らせたり…、そういうことは、いつも、お客さまの髪の毛を切りながら考えるんですよ。髪の毛を触りながら、お客さまのスタイルをどうしようかこうしようかってこともだし、ブランドのコンセプト・キーワードだとか、新しいイメージだとか、あれこれ考えを巡らせるんです。そして、一日の仕事が終わったあとで、喫茶店で一人のんびりしながら、なんとなくスケッチしたりしているうちに、だんだアイデアが固まっていくんです。

 ですから、家ではなにも考えないし、あらためて机に向かって、積極的になにかをしようとすることもない。髪を触りながら感じることが、最終的な言葉になったりするだけの話で、インスピレーションを得るための特別なことは、なにもないんですよ。僕にとって、お客さまの髪の毛を触っているときが、インスピレーションに触れているとき。お客さんに接したり、スケッチを描いたりしているうちに、なにか違うことをやりたいな、と発想していったものが作品になる。だから、髪の毛に触れずして、なにかを発想することはできないんです。

 美容の仕事は手仕事なわけですが、“触覚”ってあるじゃないですか。指先で触ったときの瞬間の感じは、目で見るより何千倍も強い意識で働くんですよ。ぬるっとしてるとか、冷たいとか、乾いているとか…、視覚よりずっと感じる。だから、指先で考えるっていうか…。もちろん、粘土でつくるとか、そうしたクリエイティブデザイン(造形)とは違います。僕らの場合、感情をもった生き物を扱っているような感覚に近い。この間は、この触り方でよかったけれど、今日は疲れている様子だから、同じ触り方では乱雑に扱われたと思う場合もある…。その人の状態によって、さわり方や接し方が変わり、反応しながら、感じながら、ヘアスタイルをつくります。

 僕にとって、サロンワークは永遠のテーマ。お客さまと共に成長する、一緒に年齢を重ねていく、そこに醍醐味があるんです。例えば、今度成人式があるとしたら、今年20歳を迎える子が、はじめてサロンに来たときは3歳だったとか…、親子ともども、家族ぐるみで、その成長を見守りながら、生き方にも接することができるんです。

 サロンでは、長く担当させてもらっていた方が、突如来なくなることもあります。でも、しばらく来なかった方が、何年かして、また来るようになったりもする。僕たちとお客さまの間で、どちらかが成長したり、ちょっと落ちたり…っていう、互いの間に何かしら成長の差が生じると、お客さまは必ず離れるんですよ。それが、戻って来られたりするときには、また一緒に歩んでいくんだなって思えたり…。そういうことが、サロンワークの本質的なことだったりするんです。

 自分にとっては、サロンワークがあるからこそ、撮影をやったり、ステージをやったりできる。もし、それを、メインにしたいんだったら、ヘア・メイクにいけばいいわけです…。僕は、そういう生き方じゃないんですね。サロンワークをして、自分のイメージをつくって、それがまたサロンワークにフィードバックされて…。その循環を続けながら、スパイラル・アップしていって、年代と共に成長していければいいなと思っています。



僕らの社会的な認知というのは、まだ美容師…、というかヘア・ドレッサーなんですよ。そうかと思えば、今は、すぐに“ヘア・アーティスト”なんて言われちゃうし(笑) いや、アーティストなんかじゃないって思いますよ。美容がブームになって一段落したところで、みんな真剣に“ヘア・デザイナー”っていう立場を考え始めたんじゃないかと思う。そして、今世紀になって、ようやくデザイナーとしての認められ方をしていくんじゃないかなって気がします。

 今は、自分がつくったデザインが、将来、美術館に永久展示されるような作品をつくりたい、と思う。インテリアにしても、バイクにしても、ミュージアムに永久保存されているわけですよ。でも、美容業界では、ヘアデザインというものを的確にとらえて美術館に展示されるような仕組みって、まだないんです。もし、そういう道もあれば、我々も燃えるだろうと思うんですよ。かといって、アートをつくるわけではないので難しいところではあるんですが、売れ線のヘアスタイルよりも、アート性の高いモノは必ず残っていく、と思うんです。いつか、なにかがきっかけになって、ヘア・デザインの世界が、新たな展開を迎えればいいなと思って、定期的にオリジナルのイメージをつくるよう積極的に活動しています。
 10年後には、ヘアの世界がデザインとして理解され、デザイナーとしての地位が確立していったらいいな、と思いますね。そういう意味では、2001年の今年はデザイン元年、という気がします。(2001年10月)。

 

Masahiro Arimura's Works

『IMAGIST』2001 FIRST TERMより
『IMAGIST』2001 SECOND TERMより


『IMAGIST』2001 FIRST TERM



『IMAGIST』2001 SECOND TERM

 

○有村 雅弘 Masahiro Arimura

1956年、鹿児島県出身。1979年、IMAIIncentive入社。現在、 Artistic Directorをつとめる。1996年、first stepにてヘアーカットのスペシャリストとしてデビューした5年計画のHair Show「5 Steps To 21st century」は2000年大成功で幕を閉じた。21世紀、新たな一歩として「IMAGIST FIRST TERM」をスタートさせる。これからのヘアーデザイナーのあり方として「都市と生活とデザイン」をテーマに挑戦しづづける。
http://www.imaii.com/

IMAII scaena
IMAII signum
IMAII
IMAII linea
IMAII bella fons

http://www.imaii.com/

 

 


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