UP DATE:2002.07.01
 
さまざまな世界で活躍するクリエーターに、昔の自分、今の自分、そしてこれからの自分のお話を伺います。子どもの頃はどんなだった? どうして今の仕事を選んだの? これからどんなことするの? いろいろな方向からお話を聞くミニ自叙伝的インタビューです。

マオマオネット インタビュー第22弾
デジタルフォトユニット
Li-Xin
 
リクシン
Li-Xinさんは、2人組のプロジェクト。とりあえず、二人とも子(ねずみ)年生まれ・男性ということだけ公表しときますってことです。お二人はチームとして、企画・アイデアづくりから、デジタルフォトの撮影、エフェクト処理、グラフィックデザインまでのすべてをトータルに考えてビジュアルを作りだしています。今回はLiさんXinさん、お二人ご一緒に、いまの仕事のことも交えて「現在・過去・未来」について語っていただきました。「デジタルフォトってどんなの?」という方も必見ですよ。。

ず、お二人のやってらっしゃる「デジタルフォトユニット」って具体的になんでしょう?
Li 僕たちの仕事は、それが平面でもビデオでも関係なく、「ビジュアルイメージを作る」ことを仕事にしています。で、その表現のための手法が、デジタルカメラでの撮影であったり、コンピュータでのデザインや編集であったりするだけで。

「デジタルフォトユニット」って、なんか、みんな誤解しちゃってると思うんです。いわゆるCG+写真のバリバリ合成写真とか、現実には存在しない、たとえばウナギイヌの実物写真版なんかを作れちゃう、そういうのがデジタルフォトなんだ!ていうイメージ(笑)。
Xin こんなイメージがつくりたいってアイデアがまずあって、まずそれを写真で撮影する。で、写真だけでは足りない部分をデジタル処理でもっと膨らませていく。そんな感じですね。まずはアイデアありき。写真だけでもできなくて、デジタル処理だけでもできないもの、その融合を目指してます。だから、フォトグラフィーやグラフィックデザインのように、ひとつのまったく別のジャンルだと思ってもらえるとわかりやすいかな。僕たちは、撮影はするけどもいわゆる職業カメラマンじゃない。ただのデジタル処理のCG屋さんでもない。なんかちょっとちがうジャンルで生きている仕事ですね。ちょっと、アウトサイダー的。

二人でこのユニットを始めようと思われたきっかけはなんですか?
Li 二人ともグラフィックデザインを本業としていたわけですが、もっと自分のイメージ通りのビジュアルを作りたい欲求ってのがありまして、じゃあ、いっそビジュアルに大きな比重を占める写真素材も自分たちで作ってしまった方が、イメージ通りのものが仕上がりやすいんじゃないかと。逆にその方がストレートだなって思い始めて、僕の方が年長なんですけど、彼にユニット結成を持ちかけた。ま、きっかけは僕のただの思いつきなんですけどね(笑)。

お二人の役割分担はどうなってますか?
Li まず僕が、こんなことやろうって言い出したり、こんな仕事があるからやってみようと言いだす係。いわばプロデューサー的な役割なのかな。そういうの、得意なんです(笑)。で、表現の場を設定する訳ですね。

それからの最初の企画やアイデアだしの部分は、二人で一緒にやりますね。先にビジュアルイメージがぽんとひらめいた方が勝ちっていうか。僕がいきなり「こんな感じの○○」っていって、漠然としたボールを彼に投げる。で、彼もよくわかんないけど「○□△□」って投げ返してくる。じゃあ「○□△」かなあって返す。この「 」の中って、全然具体的じゃないですよ。なんじゃこれ、って感じに抽象的。でも、こんな訳のわからないキャッチボールの間に、足し算引き算が行われて、なんだか出来上がっていくという感じ。具体的な細かいディレクションとかって結局はアイデアの幅が広がらないんです。それなら一人でやってる方がいい。二人でやる意味ってのは、お互いが自分なりに考えて膨らませることだから。キャッチボールのあとは、お互いおまかせ状態。それであがったものを見て、二人でああだこうだと考える。
Xin 実際的な作業としては、Liさんが、おじいさんやお父さんが写真家で、大学で写真を勉強していて写真の素養もある。それで彼がデジタルカメラの撮影を担当。もちろん、僕が撮影することもたまにあります。僕はカメラの露出とかそういうことは全然わからないので彼にまかせちゃう。できあがった写真の加工は、僕が担当します。僕は、撮影された写真素材をそのまま生かしたい方なので、なるべく彼の写真を生かすかたちで、それにプラスするかたちで効果のあるエフェクトをいろいろ試していく。エフェクトって、素材の味を生かす料理方法と似てますね。でも、ただシンプルに素材の味を生かしたオーソドックスな和食にするんじゃなくて、いつも思いもよらないフュージョン料理になったりするんですけど。

お二人の子どもの頃はどんな感じだったんですか? その頃のことが、いまの仕事とつながってる気はしますか?
Li 僕はただの野球少年だったなあ。音楽も好きで、レコードを一生懸命買い集めていた。ごく普通の少年時代。でもその音楽好きが高じて、次第にシンセとか買ってバンドをやったりしていく。当時はいわゆるテクノ全盛期。シンセがあれば、楽譜を書いたり読んだりできない自分でも音楽が作れる。革命的ですよね。いまから思うと、それがいまの僕のデジタル初体験。打ち込んで、ひとりで作っていける。学生時代には、音とアート作品をセットしたカセットブックなんかを作ってインディーズレーベルで販売したこともあります。写真家の父の仕事を手伝ったりしていたので、写真はごく普通に撮っていた。当時の有名インディーズバンドなんかを個人的に撮影していたこともありますよ。たぶん、なんでもやりたかったし、なんでもつくりたかった。なにか面白いものをつくりたかった。その気持ちは、いまも同じなんじゃないかなあ。

そして美術系の大学を卒業してデザイナーになっていく訳です。デザイナーになってからも、コンピュータは自分の創造力を引き出してくれる抜群の万能ツールだった。別にむずかしい技術を知らなくても、誰にでも表現ができる。だからこそ、個人のセンスとか素養がものすごく大切になっていくんだけど。
Xin 僕はマンガを描くのが好きな子どもでしたね。しかも、ストーリーやコマ割り考えるのが面倒だったので、キメのシーン一発だけ一枚で描くというマンガイラストだった。だから背後のストーリーやキャラクター、状況設定なんかもその一枚にすべて凝縮されちゃうんですよ(笑)。なんかそれは、いまのデジタルフォトに似てるかな。一枚のシーンですべてを表現するっていうところが。

それに、粘土好きな子どもでしたね。油粘土をバケツ一杯買ってもらって、日がな一日こたつ台を粘土台がわりに、粘土を作ってた。おもちゃを買ってもらうかわりに、自分で粘土でおもちゃを作ってたんですよ。買ってもらうよりいっぱい作れるし。すごく経済的! 我ながら親孝行だ(笑)。それに作ってはまた新しいものが作れるし。この辺もチョット、自分たちでなにもかもやったり、試行錯誤してビジュアルをつくりだしていくといういまの作業につながるといえばつながるかなあ。で、まあ、絵を描くのが好きってのが高じて、美術系の大学を目指して、そしてデザイナーという職業に就くわけです。

二人でユニットというのは、センスやデザインテイストの部分に共通性がないとつらいと思いますが、そのあたりは割と似てらっしゃるんですか?
Li 僕たちはジェネレーション的にはずいぶん離れてるんですよ。だって二人とも子(ねずみ)年ですから(笑)。でも、デザインの、なにがイイ、なにがダメっていう、基本のところは同じ。もちろん好みはまったく違いますよ。たとえば、僕はロシアアバンギャルド大好き。彼はそれってなに?って知らなかったりしますもん。けれど、お互いに傾向がちがっても、そのよさがわかるから。その辺は全然違和感ないですね。逆にまったく同じ嗜好だったら、それはそれで気持ち悪いじゃないですか。
Xin 唯一、問題なのはお笑いの嗜好性がちがうってことですかね。僕はもう子ども時代からの欽ちゃん派。だってウチの方ではそれしかやってなかったんだもん。彼は吉本のお笑いで育った根っからの関西人。基本的に吉本好きの人って、欽ちゃん一派のお笑いをバカにしてるじゃないですか(笑)? っていうかすでにバカにされてるんですよ。僕のユーモアセンスがダメなのは欽ちゃん派だからだって。その点がねえ、僕のついていけないとこですかね。

いま現在のデジタルフォトユニットのお仕事はいかがですか? デジタルフォトをやっていて面白いのはどういうところでしょう?
Li 以前音楽雑誌のアートディレクターをやっていたことがあるんですが、当時はまだコンピュータですべてのデザインができなかった。できてもロゴまわりくらいのデザイン。カメラマンや編集者と打ち合わせをして、ページ毎の撮影コンセプトや設定を考えて、撮影場所を押さえて、撮影して、現像あがりを待って、写真を選んで、それからデザインという工程でやっていたわけです。まあ、いまでも、広告や雑誌の現場ではそうなんですけど、そういうことがトータルに自分で管理できちゃうのがいいところですよね。逆に作業が増えて大変になっちゃうってこともあるんですけど。イメージを思い通りにコントロールできるというか、やりやすいですね。時間も驚くほど短縮できますし。それに、デジタルですべてを扱っているから、基本的には最終的な印刷の仕上がりとまったく違いはないんです。そのたびごとに出力して確認して、最終的に出来上がっても、そのイメージのズレがないってのはすごいですよね。
Xin うん、やっぱり自分たちでトータルにできるから、つくり方にムダがないところですよね。カメラマンに気を遣わなくても、大幅な変更もできるし(笑)。それは冗談としても、途中変更しやすいということは、思いついたこと・閃いたことがそのまま試せるってことなんです。自由な思考を妨げないっていうか、なんでもできちゃう。ま、なんでもできすぎちゃって困ることも多々あるんですけどね。たとえば、あがってきた写真素材から、インスピレーションを受けて変わるときもあるし、どんどんフィードバックも取り入れられる。その自由さがいいですね。どんな素材でも自由に処理できる。だからこそ、最初のアイデアだしのときの企画やテイストがちゃんとしていないとダメなんですけどね。

デジタルフォトのお仕事と切り離せないかと思いますが、最後にLi-Xinさんの未来の夢を教えてください。
Li 何度もいうようですが、デジタルフォトという概念をまだまだみんな、写真の焼き直しとか、重みがないとか、ネガティブなイメージでしか捉えていないんですよ。それに注文する立場だって、「写真でできないから、こんなの作って」とかしかいえない。写真ではあるけど、従来の写真ではないんだと、実際にはポートフォリオを見てもらって、わかってもらうんですけど。だから今後はデジタルフォトっていうちゃんとしたジャンルが、みんなに理解されていくといいですね。10年後には、そういうジャンルができあがってるくらいに。これって別に特別なことでもないし、印画紙に焼き付ける写真のよさももちろんある。その中からぴったりイメージにあったものを選べる、デザイナーにとっては表現上、選べる選択肢が多くなるってことですからね。
Xin 僕たちもまだ実験中の過渡期みたいな部分もありますから、もっといろいろなことを試していきたいですね。ものすごく予算のいっぱいある仕事とかもやってみたい(笑)。

デジタルフォトって、誰にでもできる技術なんです。僕がやったエフェクトだって、見れば誰にでもきっとマネできちゃう。だからこそ、発想や企画で差をつけないとダメでしょうね。見たこともないものを見せてあげる。それは合成とかそういうことではなくて。たぶん、その辺の子どもの撮影した写真でも、コンセプト次第ではものすごく面白いものにしてあげられると思うし、フリー素材だってそうです。大切なのは、その素材の個性をわかってあげてどのくらいその魅力を引き出せるかってことなんです。そういう基本の考えかたのところは、10年後だって20年後だって変わってないでしょうね。

 

Li-Xin's Work

mao2 vol05: collabo: FLOWERS OF ROMANCE『Red 』

mao2 vol06: collabo:『Nostalgia 02』

mao2 vol06: 『Sanshin Building since 1929』
mao2 vol06: 『Tokyo Tower since1958』

PEN 2002年6月1日号  Brand Selection PANASONIC
Styling by Kan Nakagawara Hair&Make-up by Kei Saito(HAPP'S)

PEN 2002年6月1日号  Brand Selection PANASONIC
Styling by Kan Nakagawara Hair&Make-up by Kei Saito(HAPP'S)


○Li-Xin (リクシン/デジタルフォトユニット)

2000年より活動開始。子年生まれ・男性2人組のチームプロジェクト。デジタル写真撮影からそのエフェクトにいたるまでをトータルに制作するデジタルフォトユニット。その活動する表現メディアは、エディトリアルから雑誌広告、ウェブやプロモーションビデオまで、ジャンルを問わず。マオマオネットでは、ヘアメイクアーティストとのコラボレーション『COLLABO』を連載中。『COLLABO』では撮影モデルも常時募集中です。


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