2002/04/05


とかちニスト 後藤健市

北海道の十勝をベースに、さまざまな活動を展開中の後藤健市さんからの北の情報便。「こんなところで生きていて」「こんなことをやっていて」「そしてこんなことをやりたいんだけど」「みんなどうだい一緒にやらんかい?」という、アイデアいっぱいの後藤さんの日々のお話です。とかち日記を通して、十勝についてもよく知ってほしいな。

第5回:とかち体感ツアー

「とかち体感ツアー」というのを8年前からやっている。文字通り「とかち(十勝)」という場を体で感じよう、楽しもうという企画である。対象者は一般の人ではなく、視覚に障害を持つ人。その第8回を3月中旬に開催した。

今回の参加者は東京から1名、大阪から7名。大阪組は視覚障害者が3名、晴眼者(サポートメンバー)が4名。前に参加したことのある人が5名、新しく参加した人が3名であった。大阪組は晴眼者がいるので歩行のガイド付きだが、東京からの参加者は全盲者が一人でとかち帯広空港まで来た。というと、とてつもなくすごいことのように思えるが、本人にしてみたらごく普通のこと。大阪組の参加者も全盲でありながら空港までは一人で来ている。彼(彼女)らと行動を共にしていると、「見えない」って何だろうか、さらには「見えている」「見る」ということは何だろうかということを考えさせられる。東京や大阪は人が沢山いるから「さほど心配ないんですよ」という。何故なら、道が分からなくなっても、ちょっと高い声を出して「すみませーん」と言えば必ず誰かがヘルプしてくれるからだそうだ。その点、地方の場合は、声を出しても周りに誰もいないことが考えられるから白杖をつきながらの単独行動も自ずと制限されてしまうかもしれないということを話していた。

ちなみに視覚から入手している情報は70%も80%とも言われている。その70%、80%を失ってしまうことは見えている人にとっては想像すらできない。失明すると宣告された人の多くは絶望し、一度は自らの死を考えるというのも頷ける。見えていることが当たり前の人には見えない世界は分からない。分からないということをちゃんと分かっていないから、見ないで得られる情報がどれだけあるのかを考えることなく、視覚以外の感覚が私たちにとってどれだけ有効なものかを考えることなく、視覚障害という世界を一方的に決めつけてしまっている。その決めつけが、自分では意識することないまま視覚障害者やそれ以外の障害者に向けられているのだ。偏見は無理解から生じ、差別は自分の心の弱さから生じる。と、俺は思う。実は数年前から自分の心を見つめ直す「ぴゅあマインドプログラム」というのをやっているのだが、このツアーがそのプログラムを作った原点である。

それにしてもいままでよく無事にやってこれたなと思う。毎回、ツアーの最初に参加者に伝えているのは「誰かが怪我したら、このツアーは今後続けられなくなる」ということ。視覚に障害があろうと無かろうとまず自分の責任と覚悟を明確にしてもらうことが大切である。見えている人の役割も視覚障害者の人をサポートするのではなく、一緒に楽しむ仲間である。もちろん、見えないことで困るところのサポートはするが…。

今回は冬のスポーツを楽しんだ。初日はスノーボードラフティングから始まり、スノーモービルの運転、そしてクロスカントリースキー。2日目はアルペンスキー。前回の冬のプログラムではスノーボードに挑戦したが、怪我をする可能性が高いので今回はスキーにした。そして3日目はアイススケート。参加者の一人が「失明したからスキーはもうできないとあきらめていた」と話してくれた。中には「見えている時には一度もやったことがないのに、見えなくなってからスキーを始めることになった」という人もいた。そんな話を聞きながら、何事にも切っ掛けが必要であり、その切っ掛けを作る人が必要だということを改めて感じた。スノーモービルの運転にも挑戦してもらったが、「自分で乗り物の運転をする」ということは想像すらしなかったという。後ろにサポーターが同乗し耳元で指示をしながらではあるが、直線で出す40キロ近くのスピードの中でこれまでとは異なる自分の可能性を感じくれていたようである。

乗馬、釣り、イカダ作り&川下り、カヌー、レーシングカート、パラグライダー、パラセーリング、スキー、クロスカントリースキー、スノーボード、スケート、パークゴルフ、犬ぞり、バター作り、ソーセージ作り、アイスクリーム作り、羊の毛刈り、毛糸つむぎ、キャンプ、などなど、十勝で楽しめるさまざまなことに挑戦してきた。それぞれのプログラムをやっているスタッフの人も、参加者が視覚障害者だと告げるとほとんどの場合「危ないので無理ですね」という答えが返ってくる。「やれる範囲でいいから」と説得し実施してきたが、参加者の積極的な取り組み、さらには思った以上にスムーズにやれるのを見て、視覚障害に対する考え方を改めてくれるようである。帰るときにはいつも「また来てくださいね」と笑顔で送ってくれる。

晴眼者の参加者も視覚障害者の参加者と同じ費用を払ってもらっているが、自立して活動する視覚障害者と共に過ごすことで、元気や勇気をもらうことができるし、自分自身(考え方や可能性)を見つめ直すことにもなる。次回は今年の夏を予定しているので、興味のある人は参加してみては如何かな。

書くのを忘れていたが、もちろん十勝の食も思う存分楽しんでもらった。メニューだけ紹介させてもらうと、かに大将のかにと地酒、平和園のじんぎすかん・ハラミ、ランチョエルパソのハム・ソーセージ・ラムタン・地ビール、六花亭のソフトクリーム・ホットケーキ・ワッフル、十勝正直村の豚丼・ハンバーグ・豆腐コロッケ・豆腐サラダ。どれもこれも、安くてうまい!! 


とかちニスト 後藤健市

【PROFILE】
北海道の中でも北海道らしいと言われている「十勝」をベースに、
福祉・教育・ビジネス・まちづくりとさまざまな活動に取り組んでいる。
変革の時代はチャンスの時代。IT時代はチャンスの時代。
自らの地域を知ることから新たな地域づくりに取り組み、
さらに新たなビジネスを生み出していきたいと日夜奮闘中。
思いついたらすぐ行動。
下手な鉄砲を撃ちつづけているが玉はなかなかあたらない。
「かに」のレストランをスタートさせたり、
話題の「北の屋台」に出店したりと21世紀もエネルギー全開!
 福祉・教育分野では「ぴゅあマインドプログラム」
(心の気づきのプログラム)を開発し、
全国の企業や学校で展開中。
【URL
社会福祉法人 ほく・てん
http://www.abix.co.jp/tenji/main.html
【e-mail address】
kgoto@hokuten.com