2002/04/12

とかちニスト 後藤健市
| 北海道の十勝をベースに、さまざまな活動を展開中の後藤健市さんからの北の情報便。「こんなところで生きていて」「こんなことをやっていて」「そしてこんなことをやりたいんだけど」「みんなどうだい一緒にやらんかい?」という、アイデアいっぱいの後藤さんの日々のお話です。とかち日記を通して、十勝についてもよく知ってほしいな。 |
第7回:ハッピーデザイン
| 春だ、春だと浮かれていたら、いきなり冬に逆戻り。ここ数日、寒い日が続いている。日中の気温が5度程度。風が強いと寒さはさらに厳しく感じられる。もちろんストーブはまだまだ欠かせない。 それにしても人間というのは不思議だ。真冬にはマイナス10度でも「今日は暖かい」と感じるのに、今は5度がめちゃ寒い。部屋の温度も同じことが言えるが、夏の20度は涼しく、冬の20度は肌寒く感じてしまう。 さて、今回は「ハッピーデザイン」について書かせてもらう。 「ハッピーデザイン」とは、より多くの人を対象にするのではなく、一人(個)を大切にするデザイン。それを見た人、使った人の心が動き、そして、誰かに伝えたくなるデザイン。それは、1つのデザイン(モノ)を通して、作る人と、それを見る人・使う人の心が通い合うこと。 便利さ、使いやすさだけではなく、いいものを見たり使ったりすると、そのモノやシステムに込められた想いを感じることがある。そんな時に人はその気持ちを誰かに伝えたり、自慢したくなる。もちろん、その人は心身に障害がある場合もあれば、そうでない場合もある。障害の有無とは関係なく一人(個)をしっかりと大切にするから、それ以外の人も大切にできる。それが「ハッピーデザイン」だ。 ユニバーサルデザイン的に考えると、100人で1つのデザインを目指すことになるが、「ハッピーデザイン」は100人いたら100の「ハッピーデザイン」が出てくるかもしれない。それでいいし、だからこそ「ハッピーデザイン」だ。 全ての人が納得することが本当に可能であればそれがベストだが、多くの場合、納得というよりは妥協している。譲り合うという言葉を使えば聞こえがいいが、デザイン面で言うとそれがいい結果に結びつくとは限らない。(というか、マイナスになるだろう。) 一人を大切にするというのは、その人の個性を尊重することである。全ての人が納得できるデザインでないけど、たった一人かもしれないけど、その人が心の底からハッピーな気持ちになり、夢を持つことができるデザインであれば、それはその人にとってとても大切な「ハッピーデザイン」である。 同じではないが、同じでないからこそ価値がある。違いを認めること、他者を認めること、さらに同じでないことを受け入れることがハッピーデザインの基本であり、その中にこそバリアフリーのマインドが存在していると俺は思う。 「ハッピーデザイン」の具体例は何か。例えば「社会福祉法人ほくてん(俺の職場)」のカラー点字プレート。これは視覚障害者の文字である点字を打つ道具なのだが、それに色を付けたり、形状をデザインしたことによって、視覚障害者用の特別な道具から一般の道具に変わった。(カラー点字プレートは東急ハンズ新宿店で売っている。) その道具を使って一般(視覚に障害がない)の人が「名刺に点字を入れる」という運動を展開しているのだが、名刺に点字を入れることが「いいこと」「意義がある」から「かっこいい」「おしゃれ」といった福祉分野以外の言葉で評価されるようになった。つまり、カラー点字プレートという具体的な商品の登場によって、みんなの意識が変わったのである。 「福祉」という言葉をことさら意識することなく、「楽しい」とか「面白い」という日常の意識の延長線上でやっていることが、結果としてユニバーサルやバリアフリーにつながり福祉の向上に寄与していく。大切なのは「普通」の意識、特別なもの(こと)は長く続かないのである。 補聴器について考えてみよう。なるべく目立たないようにという配慮で肌色が使われていることが多い。でも、これがかえって不自然に目立ち、不気味なデザインになっている。身につけるものだから材質にももっと気を使うべきだし、カラフルな色があってもいい。イタリアにはそんな派手でポップな補聴器がすでにあるそうだ。「ハッピーデザイン」はデザインの先進地では当たり前のことなのかもしれない。 メガネは視力が低下した人が使うものだが、今では目が悪くなくてもファッションでかける人がいる。視力が低下してメガネを使用するのは、不自由ではあるが、恥ずかしいと思う人はあまりいないだろう。だが、耳が悪いことは隠しているように思える。 障害のある人が自らの障害に屈託を持ち、その障害を隠したいと思っているということも確かにあるが、健常者にも障害者にも同時に受け入れられ、社会的にも認知させるためには、デザインは非常に重要な役割を担っている。特に福祉分野では、一般社会でごく当たり前のデザインが入り込んでいない。 デザインというものが持っている力を正しく認識し、最大限発揮していくことが「ハッピーデザイン」の役割である。カラー点字プレートがそうであるように、また眼鏡がそうであるようにデザインの力によって「障害」に対する偏見を取り除くことができるはずだ。 人それぞれの「ハッピーデザイン」は異なる。それは「良い」「悪い」という評価ではなく、その人の感性であり主張(メッセージ)だからである。当然、それぞれの主張にはそれを主張した個人の責任が伴う。 「ハッピーデザイン」は、あくまでも「特定の個」を対象にするものであり、最初に「障害の有無」を議論する必要はない。「障害」も対象となる個(人)の一つの個性であり、その個性に対してどのようなデザインがなされるか、ということだ。不特定多数を対象にしたデザインではないし、またデザインをする側の一方的な自己主張(表現:アート?)でもない。 一人でも多くの人にこの考え方を知っていただき、それぞれが自分の「ハッピーデザイン」を探すような動きが生じれば、そこから一人ひとりの個性を認める心が育ち、結果として社会のバリアが取れてくると俺は考えている。 著名な誰かの考え方をそのまま受け入れたり、その考えの是非や解釈について議論するのではなく、あくまでも自分の「ハッピーデザイン」を見つけ出し、その数を一つずつ増やしていくことが「真に豊かな」社会の構築につながっていくのではないか。 みんながそれぞれハッピーだと感じるデザインを探し出し、主張しあう、いつかそんなコンテストをやってみたいと考えている。繰り返しになるが、「ハッピーデザイン」とは、それを発信する個人や企業からのメッセージであり主張なのだ。責任の伴う主張である。 自分にとっての「ハッピーデザイン」は何かを考え、一度仲間と話してみてはどうだろうか。自分や仲間の新たな一面を発見できると思う。 |
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とかちニスト 後藤健市
【PROFILE】 北海道の中でも北海道らしいと言われている「十勝」をベースに、 福祉・教育・ビジネス・まちづくりとさまざまな活動に取り組んでいる。 変革の時代はチャンスの時代。IT時代はチャンスの時代。 自らの地域を知ることから新たな地域づくりに取り組み、 さらに新たなビジネスを生み出していきたいと日夜奮闘中。 思いついたらすぐ行動。 下手な鉄砲を撃ちつづけているが玉はなかなかあたらない。 「かに」のレストランをスタートさせたり、 話題の「北の屋台」に出店したりと21世紀もエネルギー全開! 福祉・教育分野では「ぴゅあマインドプログラム」 (心の気づきのプログラム)を開発し、 全国の企業や学校で展開中。 【URL】 社会福祉法人 ほく・てん http://www.abix.co.jp/tenji/main.html 【e-mail address】 kgoto@hokuten.com |